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ウォーターフォールモデルとは?開発手法の特徴とメリット・デメリットを解説

2025年7月4日

ウォーターフォールモデルとは?開発手法の特徴とメリット・デメリットを解説

ウォーターフォールモデルは、システム開発における代表的な開発手法の一つです。要件定義から設計、実装、テスト、リリースまでの工程を順次進めていく開発モデルとして、多くの企業で採用されています。本記事では、ウォーターフォール開発の基本概念から具体的な工程、メリット・デメリット、アジャイル開発との違い、適用場面まで詳しく解説します。

ウォーターフォールモデルとは?基本概念と特徴を解説

ウォーターフォールモデルの定義

ウォーターフォールモデルとは、ソフトウェア開発手法の一つで、開発工程を順次進めていく開発モデルです。ウォーターフォール開発では、要件定義から設計、実装、テスト、リリースまでの各工程を段階的に進め、前の工程が完了してから次の工程に進むという特徴があります。この開発手法は、水が滝のように上から下へと流れるように、工程を一方向に進めていくことからウォーターフォールと名付けられました。

ウォーターフォールモデルは、1970年代に提唱された歴史ある開発手法で、現在でも多くの開発プロジェクトで採用されています。特に大規模なシステム開発や、要件が明確に定義されているプロジェクトにおいて、その効果を発揮する開発手法として知られています。

ウォーターフォールモデルの歴史と背景

ウォーターフォールモデルの歴史は、1970年にウィンストン・ロイスが発表した論文にまで遡ります。当時のソフトウェア開発では、計画性や体系性が重視され、製造業における品質管理の考え方が取り入れられていました。この背景から、ウォーターフォール開発は各工程を明確に区分し、工程ごとに成果物を作成する開発手法として確立されました。

1980年代から1990年代にかけて、ウォーターフォールモデルは多くの企業で標準的な開発手法として採用されてきました。特に、銀行や保険業界などの金融機関や、政府機関のシステム開発において、その品質を担保する特性が評価され、広く普及しました。

ウォーターフォール開発の基本的な考え方

ウォーターフォール開発の基本的な考え方は、開発を進める前に十分な計画を立て、各工程で必要な成果物を確実に作成することです。この開発手法では、前の工程で作成された成果物の品質を担保してから次の工程に進むため、各工程での作業内容が明確になり、進捗管理がしやすいという特徴があります。

また、ウォーターフォールモデルは、開発チームの役割分担を明確にし、専門性を活かした効率的な開発を可能にします。要件定義を担当する業務アナリスト、設計を担当するシステムアーキテクト、実装を担当するプログラマーなど、それぞれの専門分野に特化した役割分担により、高品質な成果物の作成を目指します。

ウォーターフォールモデルの特徴

ウォーターフォールモデルには、以下のような特徴があります。まず、各工程が明確に区分されているため、プロジェクトの進捗状況を把握しやすく、管理がしやすいという点が挙げられます。また、各工程で作成される成果物が明確に定義されているため、品質管理を徹底しやすいという特徴もあります。

さらに、ウォーターフォールモデルでは、開発を進める前に要件定義を十分に行うため、プロジェクトの全体像を把握しやすく、開発期間やコストの見積もりが比較的正確に行えます。これにより、大規模な開発プロジェクトでも、計画的に開発を進めることができます。

ウォーターフォールモデルとは?開発手法の特徴とメリット・デメリットを解説

ウォーターフォールモデルの工程と進め方

要件定義工程の詳細

要件定義工程は、ウォーターフォール開発において最も重要な工程の一つです。この工程では、開発するシステムの機能要件と非機能要件を明確に定義し、ステークホルダーとの合意を形成します。要件定義の品質は、プロジェクト全体の成功を左右するため、十分な時間をかけて丁寧に行う必要があります。

要件定義工程では、業務分析、要件の収集・整理、要件の優先順位付け、要件の文書化などの作業を行います。この工程で作成される成果物には、要件定義書、業務フロー図、画面仕様書などがあり、これらの成果物が次の工程の基盤となります。

基本設計・外部設計工程

基本設計工程では、要件定義工程で定義された要件をもとに、システムの全体的な設計を行います。この工程では、システムアーキテクチャの定義、データベース設計、インターフェース設計などを行い、システムの基本的な構造を決定します。

外部設計とも呼ばれるこの工程では、ユーザーから見たシステムの振る舞いを定義します。画面設計、帳票設計、外部システムとの連携仕様など、システムの外部インターフェースに関する設計を行います。

詳細設計・内部設計工程

詳細設計工程では、基本設計で定義されたシステムの構造をもとに、実装レベルでの詳細な設計を行います。この工程では、プログラムの内部構造、データ構造、アルゴリズム、モジュール間の関係などを詳細に定義します。

内部設計とも呼ばれるこの工程で作成される成果物には、詳細設計書、プログラム仕様書、データベース詳細設計書などがあります。これらの成果物は、実装工程でプログラマーが参照する重要な資料となります。

コーディング・実装工程

実装工程では、詳細設計で定義された仕様に基づいて、実際にプログラムのコーディングを行います。この工程では、プログラミング言語を使用して、設計書に記載された機能を実装します。

コーディング工程では、コーディング規約の遵守、コードレビューの実施、単体テストの実施などの品質管理活動も並行して行われます。これにより、実装される各モジュールの品質を担保します。

テスト工程(単体・結合・システム)

テスト工程は、ウォーターフォール開発において品質を担保する重要な工程です。この工程では、単体テスト、結合テスト、システムテストの3段階でテストを実施します。

単体テストでは、個々のモジュールの動作を検証し、結合テストでは、複数のモジュールを組み合わせた際の動作を検証します。システムテストでは、システム全体の動作を検証し、要件定義で定義された機能が正しく実装されているかを確認します。

リリース・運用工程

リリース工程では、テストを完了したシステムを本番環境に導入します。この工程では、システムの本番環境への移行、ユーザートレーニング、運用手順書の作成などを行います。

運用工程では、システムの稼働監視、障害対応、保守・改修などを行います。ウォーターフォール開発では、運用工程も含めてプロジェクトの成果物と考えられます。

ウォーターフォールモデルとは?開発手法の特徴とメリット・デメリットを解説

ウォーターフォール開発のメリット

進捗管理が容易である

ウォーターフォール開発の最大のメリットの一つは、進捗管理が容易であることです。各工程が明確に定義されているため、プロジェクトマネージャーは現在どの工程にいるのか、どの程度進捗しているのかを容易に把握できます。また、各工程の完了基準が明確に定められているため、工程の完了判定も客観的に行えます。

このような特徴により、ウォーターフォールモデルは大規模なプロジェクトでも効率的にプロジェクト管理を行うことができます。特に、複数のチームが並行して作業を進める場合でも、各チームの進捗状況を統合的に管理することが可能です。

品質を担保しやすい

ウォーターフォール開発では、各工程で成果物を確実に作成し、その品質を担保してから次の工程に進むため、全体的な品質管理を徹底しやすいという特徴があります。各工程での成果物にはレビューやテストが行われ、品質基準を満たしていることが確認されてから次の工程に進みます。

また、ウォーターフォールモデルでは、テスト工程が明確に定義されているため、体系的なテストを実施することができます。単体テスト、結合テスト、システムテストという段階的なテストにより、品質の高いシステムを構築できます。

予算とリソースの計画がしやすい

ウォーターフォール開発では、要件定義の段階でプロジェクトの全体像を把握できるため、開発期間やコスト、必要なリソースの見積もりを比較的正確に行うことができます。これにより、プロジェクトの予算計画を立てやすく、リソースの調達も計画的に行えます。

また、各工程で必要なスキルや役割が明確に定義されているため、適切なタイミングで必要な人材を配置することができます。これにより、効率的なリソース活用が可能になります。

各工程の成果物が明確

ウォーターフォール開発では、各工程で作成される成果物が明確に定義されています。要件定義書、基本設計書、詳細設計書、テスト仕様書など、各工程で作成される成果物は、次の工程の作業の基盤となります。

このように成果物が明確であることにより、プロジェクト全体の進捗状況を把握しやすく、また、プロジェクト完了後の保守・改修作業においても、これらの成果物を参照することで効率的に作業を進めることができます。

開発チームの役割分担が明確

ウォーターフォールモデルでは、各工程における役割分担が明確に定義されています。要件定義を担当する業務アナリスト、設計を担当するシステムアーキテクト、実装を担当するプログラマー、テストを担当するテスターなど、それぞれの専門分野に特化した役割分担により、効率的な開発が可能になります。

このような明確な役割分担により、各メンバーは自分の担当領域に集中して作業を進めることができ、専門性を活かした高品質な成果物の作成が可能になります。

ウォーターフォールモデルとは?開発手法の特徴とメリット・デメリットを解説

ウォーターフォール開発での仕様変更対応

仕様変更が発生する原因

ウォーターフォール開発において仕様変更が発生する主な原因は、要件定義段階での不備や顧客要求の変化にあります。開発を進めていく中で、実際に動作するシステムを見た際に新たな要求が生まれることは珍しくありません。また、市場環境の変化や法規制の改定により、当初の要件から変更が必要になるケースも存在します。

ウォーターフォールモデルでは、各工程を順次進めていくため、後工程での仕様変更が発生した場合、前の工程に戻って修正を行う必要があり、大幅な工数増加につながります。この特性を理解し、要件定義を十分に行うことが重要です。

変更管理プロセス

ウォーターフォール開発では、仕様変更が発生した際の管理プロセスを明確に定義することが不可欠です。変更要求の受付から影響度分析、承認、実装まで の一連の流れを標準化し、プロジェクトチーム全体で共有しておく必要があります。

変更管理において重要なのは、変更の必要性と影響範囲を十分に検討することです。開発手法としてウォーターフォールを採用している場合、軽微な変更であっても複数の工程に影響を与える可能性があるため、慎重な判断が求められます。

影響範囲の分析方法

仕様変更の影響範囲を正確に把握するためには、各工程の成果物との関連性を詳細に分析する必要があります。要件定義での変更であれば、基本設計、詳細設計、実装、テストまでの全工程に影響が及ぶ可能性があります。

影響範囲の分析では、関連する機能やシステム間の連携部分も考慮する必要があります。ウォーターフォールモデルでは工程間の依存関係が強いため、一つの変更が複数の成果物に波及効果をもたらすことを想定した分析が重要です。

変更コストの算出と対応策

仕様変更に伴うコストは、変更が発生する工程によって大きく異なります。要件定義段階での変更は比較的コストが低く抑えられますが、テスト工程やリリース後の変更は高額になる傾向があります。

変更コストの算出では、直接的な作業工数だけでなく、品質を担保するための追加テストや文書の修正作業も含めて計算する必要があります。また、スケジュール遅延によるリスクコストも考慮することが重要です。

ウォーターフォールモデルとは?開発手法の特徴とメリット・デメリットを解説

ウォーターフォールモデルの将来性と選択指針

デジタル時代におけるウォーターフォールの位置づけ

デジタル変革が加速する現代において、ウォーターフォールモデルの位置づけは変化しています。アジャイル開発が注目される中でも、ウォーターフォール開発は特定の領域において重要な役割を担い続けています。

特に、品質や安全性が最優先される業界や、法規制が厳格な分野では、ウォーターフォールモデルの体系的なアプローチが評価されています。ウォーターフォールとアジャイルの使い分けが、現代の開発現場では重要な経営判断となっています。

他の開発手法との使い分け

ウォーターフォールモデルと他の開発手法の使い分けは、プロジェクトの性質と要求事項によって決定されます。要件が明確で変更が少ない場合はウォーターフォール、要件が流動的で迅速な対応が必要な場合はアジャイルが適しています。

開発チームの経験や組織文化も選択の重要な要因となります。ウォーターフォール開発に慣れた組織では、段階的な移行を検討することが現実的な選択肢となります。

ハイブリッド開発手法の検討

近年、ウォーターフォールとアジャイルの特徴を組み合わせたハイブリッド開発手法が注目されています。プロジェクトの特性に応じて、適切な開発手法を部分的に適用することで、それぞれのメリットを最大化できます。

例えば、要件定義と基本設計はウォーターフォール的に進め、実装以降をアジャイル的に行うアプローチが考えられます。このような柔軟な開発手法の採用により、変化に対応しながら品質を担保することが可能になります。

プロジェクト選定の判断基準

ウォーターフォールモデルを選択する際の判断基準として、以下の要素を考慮する必要があります。要件の明確性、変更の頻度、品質要求水準、開発期間、チームの経験などが重要な指標となります。

特に、監査や承認プロセスが重要な業界では、各工程の成果物が明確に定義されるウォーターフォールモデルが適しています。プロジェクトの成功確率を高めるためには、これらの判断基準を総合的に評価することが不可欠です。

ウォーターフォールモデルとは?開発手法の特徴とメリット・デメリットを解説

ウォーターフォールモデルに関するよくある質問(FAQ)

ウォーターフォールとV字モデルの違いは?

ウォーターフォールモデルとV字モデルは、どちらも順次工程を進める開発手法ですが、テスト工程の考え方に違いがあります。V字モデルでは、各開発工程に対応するテスト工程を明確に定義し、工程間の対応関係を重視します。

ウォーターフォール開発では工程を順次進めるのに対し、V字モデルでは設計工程とテスト工程を対応させることで、より体系的な品質管理を実現します。どちらも各工程の成果物を重視する点では共通しています。

小規模プロジェクトでも有効?

小規模プロジェクトにおいても、ウォーターフォールモデルは有効な開発手法となり得ます。プロジェクトの規模よりも、要件の明確性や変更の頻度が選択の重要な要因となります。

小規模であっても、品質を担保する必要がある場合や、明確な成果物が求められる場合は、ウォーターフォール開発が適しています。ただし、工程の簡略化や柔軟な運用により、効率的な開発を進めることが重要です。

アジャイルとの組み合わせは可能?

ウォーターフォールとアジャイルの組み合わせは、プロジェクトの特性に応じて可能です。例えば、要件定義と基本設計はウォーターフォール的に進め、実装以降をアジャイル的に行うハイブリッドアプローチが考えられます。

このような組み合わせにより、ウォーターフォールの計画性とアジャイルの柔軟性を両立できます。開発チームの経験や組織の文化に応じて、適切な組み合わせを選択することが重要です。

失敗しやすいプロジェクトの特徴は?

ウォーターフォール開発で失敗しやすいプロジェクトの特徴として、要件が曖昧で変更が頻繁に発生する案件が挙げられます。また、ステークホルダーの合意形成ができていない場合や、技術的な不確実性が高い場合も失敗リスクが高くなります。

さらに、各工程での成果物の品質が不十分な場合、後工程での手戻りが発生し、プロジェクト全体の遅延につながります。これらのリスクを事前に特定し、適切な対策を講じることが重要です。

成功させるためのポイントは?

ウォーターフォール開発を成功させるためには、要件定義の品質向上が最も重要なポイントです。初期段階で要件を明確化し、ステークホルダーの合意を得ることで、後工程での変更を最小限に抑えることができます。

また、各工程での成果物の品質を担保するためのレビュープロセスを確立し、次の工程に進む前に十分な検証を行うことも重要です。プロジェクト管理においては、進捗の可視化と早期のリスク検出により、問題の早期解決を図ることが成功の鍵となります。

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